引っ掻き傷 2022/04/12

からだからなにかが出てゆく
じっとみる
文字だ
ああ家に湧いたしろありのようにむすうの分岐とつらなりをもって出てくる
ぼくらはじっとしている
いまは耐える時
あなたがあなたである必要はなく
わたしがわたしである必要はないと
甘えたことを言うきみは
お祓いでもしてもらった方がいいよ
ぼくはあなたが好きだ

文字は血肉や細胞を運んで
記憶や感覚やあらゆる残滓を運ぶ
時がたつにつれてぼくらは忘れっぽくなる
文字はどこへ行くのだろう
考えてみてもいいが もう考えることもできないと言うきみは
それでも書こうとするから好きだ
あしたきみのためにノートとインクを買ってきてあげるよ
きみの引っ掻き傷だらけの膨大な量のノートはぜんぶ
ぼくがもらうからね