トドかなくてよい。そう、トドかなくてもよい、…… 2022/04/05
何も書けそうにはないときには日記を書くことにする。
自分の中から言葉がなくなったとき、パウル・ツェランの詩やサティのピアノ曲を聴くと落ち着くと思っていたけど、サティはだめだった。
やってきた、やってきた。
ひとつのことばがやってきた、やってきた、
夜をぬってやってきた、
輝こうとした、輝こうとした。
灰。
灰、灰。
夜。
夜―と―夜。――目へ
行け、濡れた目へ。
★
目へ
行け、
――濡れた目へ
(パウル・ツェラン詩集から)
本が読めないときは朗読をすればいいと気づいたけれど、そのときにはもう別の本を手にしていて、本が読めないときはあたらしい本に手を出すといいみたい。
写真を久々に撮りに行った。
眠い。立ち直りつつあるのか。資質のある人には崩壊を起こさせるといい、と神田橋條治が言っていた。ありがとう、神田橋條治さん。崩壊はいいことなんだ。
いろんな実験。立ち直るためではなく、ますます絶望し、しかしそれが破滅ではなく、夢の中の明るい小径へつながる可能性を常に持ったどん底へ行くための。しかし社会的な振る舞いの能力は身につけて。笑顔で、元気よく。常識を持って。しっかりとあいさつをして。
言葉が部屋に限定されていることの凝縮と、言葉の飛翔する力の解放。どっちにも身を委ね、目を向けること。どんな写真も多重露光してる。花は分裂してる。大袈裟な言葉は使わなくていい。貧しさを文字に結んでゆくこと。伝わらなくていい。
(この、…)葉書、…届きませんように、崖から舞って落ちても行きますように、…
(吉増剛造『Voix』から)
文字を燃やしたい。